温泉法は、経営者の良心のみに頼ってきたといっても過言ではない。しかもいったん「温泉分析書」を取得したら、たとえその源泉が枯渇しようと、廃業するまでチェックされることはない。それなら「水道水を沸かして……」と考える経営者が出てきても不思議ではない。温泉法は、経営者に様々な誘惑との戦いを強いるのである。一連の温泉騒動の報道を見て、日本にはもう真っ当な温泉はないのかという思いを抱いた方もいるかもしれないが、そんなことはない。
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マガイモノやニセモノに押されつつも、まだまだ日本にはホンモノがたくさん残っている。それは、真っ当な温泉経営者が大勢いたからである。七〇度の高温泉であっても、水一滴加えることなく源泉一〇〇%のままで適温にする湯守りを、私はこれまで何人も見てきた。彼らは、周りの旅館やホテルが、風呂を拡張し、効率のよい循環システムを導入しても、ホンモノの温泉があってこそという姿勢を微動だにしなかったのである。だからこそ、温泉は今日まで日本人に愛され、日本が世界でも稀な温泉文化を構築してこられたのだ。